僕はTodo diaという曲が好きで、いろいろなところでプレイしているのですが、LAVA作品の特徴はダンスミュージックを知らないリスナーもすんなり聴けてしまう、バツグンのソングライティング力と彼独自のネットワークから選ばれたミュージシャンが織り成す卓越した演奏力だと思います。
今回のインタビューを通じて、以前からLAVAを知っている人は改めて彼の音楽を聞くときに、少しでも新たな発見があればうれしいですし、このインタビューを読んで興味を持ったリスナーの方には彼の音楽を聴いてもらうきっかけになればと思います。最後まで楽しんでご覧ください。
最後にはLAVAオススメの5枚のレコードとサウンドファインダーのお客様へのビデオメッセージがあります。
音楽は実験的なもの
僕は子供の頃、ミックジャガーやデビットボウイになりたかったんです。当時アメリカではオリビアニュートンジョン、ビリージョエル、ジャーニーなど産業ロックが流行っていましたが、僕はUKのチャートに登場するようなアーティストに興味がありました。ブリティッシュインベンジョン(例:デペッシュモード、OMDなど)に強く影響を受けています。そのような音楽は実験的な音楽で、音楽は実験的なものなんだということを意識するようになりました。音楽を聴き始めると、好きなアーティストのギターやドラムなどをコピーしたりしますが、あまりそのようなことはしませんでした。
UKの音楽についての視野が広がったのは、ライブハウスに出演したときのギャラでデビッドボウイのジギースターダストを買ったことがきっかけでした。また、世代的にもパンクの洗礼を受けている世代なので、パンクバンドもやっていましたが、パンクについては他の人と違った捉え方をしていました。多くのパンクバンドはダブのリズムを取り込んでいることが多かったのですが、僕はリズムよりもダブのメロディに興味がありました。なので、クラッシュよりジャムが好きでしたね。僕の周りはハードコアに流れていきましたが、僕はメロディがしっかりしたものを追求していました。音楽の軸はメロディにあると思っています。これは今でも変っていません。
僕が初めてイギリスに行ったのは23歳のときでしたが、DJに興味があるとか、DJをやりたいとかそういう気持ちで行ったわけではなく、自分が好きな音楽を聴きたいという気持ちで行きました。このときの経験は人間形成をする上で非常に有意義な時間でした。なけなしのお金をはたいてギターを購入し、街角で歌っていたこともあります。一人では何もすることができないということを実感ましたね。23歳という年齢は一般的に就職活動の時期ですが、ふらふらしていることに不安な気持ちはなく、なんとかなるんだ、自分の好きな音楽を極めようと決心したときでもありました。
1年間ロンドンに滞在した後、日本に帰国し、ソロシンガーとしてメジャーレーベルからデビューする機会に恵まれました。が、当時の日本ではCMタイアップ、ドラマタイアップなどが前提でCDをリリースしなければならず、そのようなことに嫌気がさし、音楽業界に失望しました。このとき契約を打ち切って再び自分を成長させてくれた、大好きなロンドンに行くことを決意するのですが、音楽業界に失望したにも関わらず、この時僕は100曲を新たに書き下ろしています。あふれる想いがなければ、ロンドンに再び行くこともなかったような気がしますね。
ミュージシャンからDJへ
ロンドンに行って、たまたま入ったクラブでハードハウスがかかっていたのですが、踊っている人が楽しそうだし、音がでかいのに、音がいいってことが不思議でした。よく見るとフロアにDJがいて、「これだ!」と思い、気がついたらブースに行って、DJに「Let me play!」と言ってました(笑)
次の日も早い時間に同じように交渉したんですが、そのうちつまみ出されるようになった。日本にいる頃にはディスコで一番偉いのは黒服だと思っていたんですが、どうも様子が違う、ここではじめてDJって偉いんだとわかりました。僕の解釈ではDJは誰でもやらせてもらえると思っていました。今だったら、絶対できないですね。(爆笑)
LAVA(うっとおしい奴というスラング)というニックネームはこの頃ついたのですが、来る日も来る日もおんなじことをしていましたね。
どうしたらDJできるのかと考えた挙句、友達を作って、その友達づてにDJできるところを紹介してもらうことにしました。そんなことをしているうちにようやくその機会に恵まれ、MELTというテクノハウスのクラブでプレイすることができました。
ラッキーなことにそこでDJをやっていたデビットというDJの家に居候させてもらうことができるようになり、彼の家にあるDJ機材を使わせてもらえたので必死に練習をしました。ただ、元々は歌モノが好きだったので、テクノばかりプレイすることにだんだん飽きて来たこともあり、彼の家にあった昔のブラジル音源を流しながら、テクノトラックにのせてかけてみたら、これがかっこよくて。実際にクラブやってみたら評判がよく、当時ロンドンはネオブラジリアンが流行だったということもあり、別のクラブでもDJできるようになったんです。こんな生活をしているうちに、だんだんと曲を作りたくなり、イギリスのレコード会社に何も持たずに、「いい曲書きますよ」と営業に行きました。(笑)根拠のない自信、これがすべて。僕には絶対いい音楽が作れると思っていました。曲なんか作っていないのにね(爆笑)
僕がいろいろなところでそんな話をするものだから、相手もそのうちに乗り気になってきてしまい、これは本気で作らなくてはいけないなと作り始めたんですが、元々はロックの作曲をしていたので、最初のうちは苦労しました。ただ、そのうちにメロディが降ってくるようになったんです。メジャーで音楽製作をやっていた頃のような重圧がない中で、自分の好きな音楽を作れる喜びはとても自由で充実しているものでした。ちょっとしたわくわくした使命感が作曲の根底にあって、自分が元気にさせられた音楽を自分で作れる喜び。自分が作った音楽でいろんな人を元気にしてあげたいという気持ちがすべてのモチベーションにつながっていきました。音楽を創作する上での明確な方向性が見え始めたんですね。
僕の音楽はすべての人にとって喜びであって欲しい。
僕は制作する上で、いろいろな国にネタの仕込みに行くようにしているのですが、そのような中でつながりができたミュージシャンと日本にいる有望なミュージシャンとの交流ができるようなネットワークを作りたいと思っています。今後も海外とのパイプをどんどん増やして行きたいですね。特にデンマークなどの北欧の国には行ってみたい。「いい曲作りますよ」ってレコード会社に挨拶しに行かないと(笑)
僕がここまで成長できたのはダンスミュージックのおかげ。失意の中でロンドンに渡り、そこで出会ったダンスミュージックがあったからこそ今の自分があり、こうして音楽に携わることができる。僕の音楽はすべての人にとって喜びであって欲しいと思っています。僕が元気にしてもらったように、僕の音楽をきいて元気になって欲しい。
音楽を志す人に対しては、志が一緒であるメンバーと一緒に仕事をするようにしたほうがいいと伝えたい。僕は音楽を作る上で、いいチームを作りたいと思っています。製作する人、プロモーションする人、レコードショップに紹介に行く人、すべての人の志が一緒であることが大切です。これは僕の経験ですが、能動的に自分で考えて行動しないと、全部人のせいになってしまう。「あの時こうすればよかった。こうなったのはあいつのせいだ」と。自分のふがいなさを人になすりつけるというのは気分的に良くないということをメジャーで嫌というほど味わいました。残念ながら、いい音楽を作れば売れるとは限らないけど、志が同じ方向に向かっている人と仕事をすることは、すべてにおいて責任を全うするということにつながります。
リスナーの方には、音楽自体がとても便利になってきている半面、自分が本当に好きな音楽を探すということが難しくなってきていると思うので、本当に自分が好きな音楽を探す努力をいつまでも続けてほしいと思います。
リリースインフォメーション
日本人ラテン・ハウスのトップDJ、ラテン・ブラジリアンのコンポーザーLAVAが新たに魅せる、渾身のコンセプチュアル・ラテン・ジャズ2タイトルを同時リリース!
1・LAVA書き下ろしの新曲を含む、待望の全曲新録音オリジナル・アルバム!
~LAVA’s Concept for Latin Jazz Vol.1~
el jazz/LAVA
【発 売 日】2007年9月26日 (水)
【品 番】KICP-1264
【レーベル】セブンシーズ
【定 価】¥2.800
【曲目】
・Beach(Piano Trio Ver.)
・706Field(Piano Trio Ver.)
・A Night In Le Fonque(Piano Trio Ver.)
・Manteca
・Night In Tunisia
・King Of Pain feat.Mina
・Esperanza feat.Olivia Burrell(新曲)
・Green EyedFish(新曲)
・It’s Allright(新曲)
・Don’t Stay Down feat. Shawn Altman(New Version)
<曲順未定>
Latin Jazzをコンセプトに全曲録りおろし!待望の書き下ろし新曲3曲のみならず、LAVA初期のラテンハウスの名曲をピアノ・トリオでクールにセルフ・カヴァーしたもの、ラテン・ジャズのキラー・チューン“マンテカ”“チュニジアの夜”をフロア・ライクにアレンジしたもの、さらに今作の目玉とも言えるポリスの名曲“キング・オブ・ペイン”の超ダンサブルなカヴァーまで飛び出し、現在進行形のLAVAによる少し大人でコンセプチュアルなラテン・ジャズ・トラックを収録!
ラテン・ハウスのトップDJらしいダンサブルなラテン・フレイヴァー溢れるサウンドで、自身の音楽性のネクストを示唆する、極上アルバム!
2・LAVA完全プロデュースによる、マドリッド在住ユダヤ人ラテン系ジャズ・ピアニストの日本デビューアルバム!
~LAVA’s Concept for Latin Jazz Vol.2~
Dreaming On The Fire Escape/ヨシュア・エデルマンproduced by LAVA
【発 売 日】2007年9月26日 (水)
【品 番】KICP-1265
【レーベル】セブンシーズ
【定 価】¥2.800
【曲目】
・Recordando a Castillo
・Drume Negrita (arrangement by David Pastor)
・Dreaming On The Fire Escape (dedicated to Gabriel & Jiyoon)
・Waltz For Cris
・Zascandil
・Fusion de almas
・Regresando
・Sarita's Samba
・Invitacion
・Claudia
・Los Tres Golpes
・Recado Bossa Nova
・La Comparsa
・Before and After
<※曲順未定>
ラテン・ハウスのトップDJ、ラテン・ブラジリアン・コンポーザーLAVAがネクストを示唆する重要作品!
LAVAの初期傑作アルバム『Conexion』に参加していたヨシュア・エデルマンの、LAVA完全プロデュースによる日本デビュー・アルバム。ヨシュアは、スペイン・マドリッド在住のユダヤ人。プレイスタイルはクラシックを背景に持ちながらも繊細かつ大胆なラテン・タッチで、LAVAは何年もの間彼のアルバム・プロデュースのチャンスを待っていたと言う。
LAVAが東京でトラックを制作しマドリッドに飛んで生音を現地録音後、さらに東京で追加録音、ミックスを施すという、一見原始的だが制作現場のコミュニケーションによる熱が1℃たりとも失われていない熱いトラックばかりが収録されました。