Nakatsuka1_2 中塚さんとはPCMで一緒にDJしたりしているんですが、先日、「アルバムを来年出すんですよね。」っと言いながら、サンプル盤をいただきました。一緒にもらったリリースインフォを見ると、なんと客演なしって書いてある。どうしてこういうものを作ったのか?ということに興味がわいて、時間をもらって話をお聞きしました。 

最後に語ってくれた「日本のファッションにしても、音楽にしても、アートにしても、エッジの立った人が少なくなってきているような気がするんですよね。お洒落な感じ、お洒落っ ぽい、という人は沢山いると思うんですが、以前だったら尖がった人たちが聴く音楽があり、尖がった人たちが集う場所ってのがあったりした。それが、セレブ ミュージックやクラブミュージックという名のもとに消えようとしている。
お金さえ持ってればセンスも良い、という間違った発想も多いような気がします。
尖がってて、いつも何かに怒っていて、その怒りは社会でもいいし、音楽に対してでもいい。そういう熱い気持ちを持っている人に聞いてもらいたいです。」というメッセージはアルバムタイトルに冠されているRock'n'Rollそのもの。痛快だね!

・映画のサウンドトラックのようなオープニングで始まるアルバムですね。アルバム制作にあたってどんなイメージを持っていたんでしょうか?

今回はファッションブランドの5351とのコラボレーションなんですが、元々の制作についてはデザイナーの岡本さんとアートディレクターの荒木君と3人で心を通わせるところから始まりました。
元々のこの企画が始まるきっかけは僕が荒木君のラジオ番組に出してもらったところからなんですが、二人とも5351の洋服が好きで、荒木君から「岡本さんを一度紹介するよ」って言われたところからです。
それから3人で飲んだりしているうちに、面白いことができたらいいな、ということになって行きました。

・曲とか作られていたんですか?

特に曲を用意していたわけではなかったので、夏ごろから3人で始めようということなってから作り始めたんですが、制作は早い方なので、すぐに曲は用意できました。
その間、5351の方々も僕のライヴを見に来てくれたり、作品を聴いてくれたり、僕の人となりを見てくれたりとしてくれまして(笑)
最初は5351展示会用BGMのミックスCDを、40分間オリジナル曲だけで制作したんですが、それがかなり評判が良かったんですね。それで、次はCDを作ってみようと。
今回のアルバムについては、展示会用のオリジナル曲とはまた別に制作しました。曲の断片を作って送ると、デザインのラフを送り返してくれて、というような作業をしていき、作品を一緒に作る感じで進めていきました。
テーマはサーカス。このイメージに合う洋服と音楽と映像を作っていきました。
5351の2010年春/夏コレクションは、僕の音楽をイメージして洋服を作ってくれています。

・制作に苦労することはないんですか?

何だか空中に電波が飛んでいる感じで、ふっとそれを掴んで曲にできるんですよね。なので、ひっきりなしに曲のアイディアはあります。たとえば「今、5分あげるから、曲を作って」って言われればできるし。こういうことができるからこの仕事をやっているというのもありますね(笑)
失恋したり落ち込んだりしても曲だけでも浮かんでくる。

・普段に比べて制作は大変じゃなかったですか?

今回のプロジェクトは精神的なコラボレーションから始まりました。なので、無駄にスタジオに入りました(笑)
普段依頼される仕事の場合は締め切りが決まっているので、それに間に合うように制作を進めていくんですが、今回の制作については、いったりきたり差し戻しがあってよいということを前提に作りました。スタジオに入りながら曲をブラッシュアップする感じですね。共同プロデューサーの石垣健太郎さんやエンジニアの方にも理解してもらいました。

・皆さん、その進め方に嫌がりませんでしたか?

石垣健太郎さんは付き合いが長いので理解してくれていたと思うんですが、エンジニアの方は嫌がってましたねえ。
文句は言わない人なんですが、時々「チッ、チッ」という舌打ちが聞こえてきました(笑)
毎日が宴会のようなスタジオでした。みんなで飲みながらって感じで。酔っぱらってくると僕が使いものにならないので「後は、よろしく!」ってなるんですが、次の日になると、「このミックスじゃダメ」と僕が差し戻す。エンジニアにしてみればたまったもんじゃない。独裁者、中塚武で作りました(笑)

・今回は客演なしということですが。

音楽を自分一人で完結させることで、デザイナー、アートディレクターとの正三角形のコラボができたと思います。
どなたの仕事もスタッフは回りにいますが、作品はみんな基本一人で作るので、当然僕も客演なしで作ろうと思いました。
最近はサウンドプロデューサー的な人が多くて、ボーカルなどは海外の方を起用している場合も多いと思うんですが、それをやっちゃうと、正三角形のはずなのに僕だけ助っ人外国人がいる感じで良くないし(笑)
正三角形のコラボレーションにするためにも、全ての音を自分から発信したいと思いました。
いろんなアーティストがサウンドプロデューサー的な作品を作っていて、みんなかっこいいし、ある一定の水準に辿りついているなと感じるんですが、それはもう僕がやる必要もないかなと感じています。僕は僕でしか聴けないものを作ろうと思っています。
1月24日に麻布十番WAREHOUSE702でライヴをやるんですが、そのライヴでもこの3人のコラボレーションを見ていただきたいと思っています。

・今回のアルバムはどんなことにインスパイアされたんでしょうか?

僕は元々Funkが好きでした。また大学生のころ好きだったAcid JazzやRare Grooveだったり、どこかで自分の好きなそういうものを意識した部分もあるかもしれません。あと、歌詞についてもとても気を配って作りました。
今回の作品については僕たち3人の世界観から生まれた舞台を歌詞にしています。


・辰緒さんのディスクガイド「Doundble standard」でピックアップされていた音楽と最近、中塚さんがDJをする時にプレイする楽曲がずいぶんとかけ離れている感じがしますが。

DJはミュージシャンとは別の考え方があると思うんです。今新川さんと一緒にやっているPCMもそうですが、DJの時はお客さんこそが主役だと思うんです。DJの方を見ながら踊っている人なんてヨーロッパにはいないんですが、日本はアーティストのライヴを見るような感じで全員がDJを見てる。そうではなくて、DJは踊っている人をサポートするのが本当だと思うんです。PCMはそういう日本的ではないヨーロッパ的な感じがいいんですよね。
お客さんをサポートするという点で、DJはその都度その都度の流行を意識していかなきゃダメだし、臨機応変にその場の雰囲気を作るのが本物のDJだと思う。
僕はDJではなく、ミュージシャンとしての中塚武であることを強く意識しています。流行っている音楽を追いかけるのではなく、客演なしの自分の音楽を作ることができたということが今回はとても大きかった。
以前だったら制作途中に「この曲はフロアで使えるかどうか」を意識していたんですが、今回は全くそういうことは意識しませんでしたね。
ただ、前作Kiss & Rideは12inchのヴァイナルが出たように、今回もフロア向けに再編集したものをヴァイナルで出そうかという企画が進行中です。


・今はどんな音楽を聴いているんですか?

仕事柄いろんな音楽を聴いていますが、この2,3か月は打ち込みの音楽を全然聴いていませんねー。最近はアフロキューバンだったり昔のR&Bだったり、生音系の音楽に回帰している感じです。今回の作品を作っているうちにどんどんそっちの方向に行っている感じです。
打ち込みの音楽ってPCの中で完結できる音楽なので、フィジカルな部分がどんどん薄れてきている。DJもPCでやることが普通になってきている。それはそれで面白い世界があるんですが、今の僕がやるべきことでもないかなと。
歌を歌ったりすると身体を作らなきゃならないので、「今日は調子が悪いな」とか「今日はいい感じだ」というのが分かるようになるんですよね。でも、PCだと「今日は調子悪いな」とかって無いでしょ?パソコンそのものの調子が悪いってことはあるけど(爆笑)
こういうことは自分で歌を歌うことで初めて分かった世界ですね。
これからはこれをデフォルトで行きたいと思います。

・聴きどころをお願いします。

いろんなことをやっているようで、7曲全部通して聴くと、筋が通っているような感じだと思います。まず最初に全曲を通して聴いてもらって、気に入らなかったら買ってもらわなくてもいいや(爆笑)
GrooveとしてはPrinceやBeckのようだという意見もあったり、The Alan Persons Projectに通ずるという意見もあったり(笑)、この音楽がどのジャンルになるかというのは自分では分からないですね。

僕が思うに、日本のファッションにしても、音楽にしても、アートにしても、エッジの立った人が少なくなってきているような気がするんですよね。お洒落な感じ、お洒落っぽい、という人は沢山いると思うんですが、以前だったら尖がった人たちが聴く音楽があり、尖がった人たちが集う場所ってのがあったりした。それが、セレブミュージックやクラブミュージックという名のもとに消えようとしている。
お金さえ持ってればセンスも良い、という間違った発想も多いような気がします。
尖がってて、いつも何かに怒っていて、その怒りは社会でもいいし、音楽に対してでもいい。そういう熱い気持ちを持っている人に聞いてもらいたいです。
ま、これを聴いてますます怒っちゃったりするかもしれませんが(爆笑)

・今後の予定を教えてください。

この3人で全国ツアーを回る予定です。
2009年は年間15回ほどライヴをやったのですが、2010年はライヴの比重をもっと増やしたいと思っています。

リリースインフォメーション
Rocknroll_circus_2
タイトル:ROCK'N'ROLL CIRCUS
発売日:2010年1月20日
商品番号:UPCH-1766
価格:2000円(税込)
収録曲:
01. Countdown to the End of Time
02. Johnny Murphy
03. Luv’ tween the Sheets
04. On and On(リード曲:PVあり)
05. Stompin’ Jack Flash
06. ぼくらの世界(You and Me and the World)
07. Circus (Set Me Free)

・サウンドファインダーの皆さんに中塚さんからメッセージ

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