Kenichiro_nishihara_pic 前作Huming jazzはインディーズでしかも、ノンプロモーションだったにも関わらず、異例のヒット作となった。今回LIFEと名付けられた2ndアルバムには多数のゲストミュージシャンが参加し、前作にもましてメロディアスな作品となっている。1月15日の発売に先駆け、サウンドファインダーでは西原健一郎にインタビューをすることができた。

・ブログを読んでいたんですが、広範囲な音楽的な趣味がうかがわれます。音楽を始めたきっかけはどういうことだったんでしょうか?

中学生のころちょうどメロコアなどが流行ったりしていて、エレキギターを購入し、バンド活動を始めたのがきっかけです。高校の頃はバンドだけではなくMPCを購入して自分でトラックを作るようになり、本格的な音楽制作を始めました。でも、そのころももちろんバンドも続けていて、コンテスト荒らしのようなこともしていました(笑)

高校2年生のころ、藤原ヒロシさんのプロデュースでMilkというブランドのファッションショーがあり、若い奴にショーの音楽をやらせてみようと誘われたのがこの業界に入るきっかけでした。
それが17歳の時で、ギャラの代わりに洋服をもらって喜んでいたんですが(笑)いつしかいろいろなところから話をいただくようになり、デザイナーのやりたいことを音にして、ファッションショーを仕上げるということを始めました。
それほど、ファッションに対して熱意を持っていたわけではないのですが、仕事として音楽に携われることがうれしかったです。

・DJには興味があったのですか?

いろんな音楽が好きで、バンドだけでなく自分ひとりで完成させることができるのであれば、自分ひとりでやってみたいという気持ちもあったので、DJには興味がありました。僕が高校生の頃、世間的にもダンスミュージックが認知され始めた感じで、Techno、House、Hip hopなどいろいろな音楽がありました。僕もこれらの音楽は聴いていて、そのころDJ KRUSHとかが好きだったんですが、ダンスミュージックを追いかけているうちにレコードを買うようになり、DJもやるようになったという感じです。

・アルバムについてお伺いします。メロディを大切にしている印象を受けますが。

子供の習い事として、ピアノを習っていましたが、長く続けることができず、小学生に上がるころには辞めてしまいました。
高校生のころJazzに興味を持ち始めたんですが、Rockのようなギターをかき鳴らすようなコードでは表現することができないとわかり、Jazzピアノの先生のところに弟子入りのような形で再度ピアノを始めたんですが、ここから少しずつ、演奏の幅が広がって行きました。

自分は好きな音楽の共通点を紐といていくと、ブルースの3コードが好きなわけでも、ブラジルのサウダージ感でもなく、メロディそのものが好きなんだということに気付きました。このきっかけは、例えばJazzy hip hopが流行っていたときに、Ahmad Jamalのサンプリングが綺麗に響くのはJazzうんぬんじゃなくて、メロディだと感じたんです。メロディはリードをとっている楽器やボーカルだけではなく、ちょっとしたリフにも存在しうると。
今回のアルバムはソロであったり、リフであったり、そういう部分にも良いメロディを潜まして、メロディーが厚い層を成している感じに仕上げようと思いました。

・Hip hopやHouseなどバリエーション豊かな曲が多く収録されていますね。

その時々でハマる音楽があるのですが、最近はものすごくハマって聴いた音楽というのがありませんでした。
飽和状態のような印象があって、そのような状況を反映して、今回のアルバムはいろいろなタイプの音楽が入っているのかも知れません。
自分自身、今どんな音楽が好きか?と問われれば、最近は新しいものではなく再発ものの音源を聴いたりしています。

・制作にあたって苦労されるところはどういうところですか?

自分が聴いている音楽は圧倒的に欧米の音楽が多く、作品を仕上げるにあたって、海外のアーティストをフィーチャーして制作するということは自然な発想でした。音源はもちろん、契約書もメールでやりとりをして、作業を進めていきましたので、顔が見えない中で、 信頼感を得て意志疎通を図るということが大変でした。今の時代だからできる便利な方法ですが、逆にそこが大変なところでもあって。

・ラップや歌についてはどのよう入れてもらったんですか?

ラップについては基本、アーティストに任せますが、1発OK!ということは滅多にないので、何度かやりとりをしながら進めていきます。
歌については仮歌を入れておく場合もあるのですが、そこは無視してもらってかまわないので、アーティストが感じるままに歌ってもらうようにしました。

話は変わるんですが、制作は将棋に似ているような気がしていて、でも、将棋のなんたるか?を別に知ってるわけではないんですが(笑)
将棋の対局は、いくつかの型があって、その型の中でどちらの選択をするか?ということが頻繁に現れます。
制作でもばっちり縦を合わせるのか、ばっちりピッチを合わせるのか、そんなことを考えるんですよ。ここはフルートよりトランペットのほうがよかったんじゃないかとか。
正解はないけど勝負はつく。
対局が終わった後に、ガッツポーズとかしないじゃないですか?終わった後、二人して盤を眺めながら、じっくりと振り返る。勝敗の分かれ目はいくつかあると思いますが、制作についても同じようなことがいえると思います。制作途中のどこかまで戻って、リワークという感じで作品を再度手掛けるということもしようと思っています。

・今回のアルバムについての聴きどころをお願いします。

アルバムタイトルがLIFEですが、制作当初から漠然と大きなイメージのタイトルをつけたいと考えていました。
歌詞についてはアーティストに自由にお願いしているのですが、偶然にも参加してくれたアーティスト全員にポジティブなメッセージが強く、まさにLIFEという感じでした。一番最後に収録されているアルバムタイトル曲には「毎日の生活の中にこそ大切なものがある」というような意味が含まれているのですが、このメッセージを感じて欲しいです。メロディも大切なんですが、詞に込められたメッセージも力強く感じるアルバムです。

音楽業界を含め、日々ネガティブな話題が多くあり、何となく閉そく感があるように思うのですが、アルバムを制作している間は日々の生活にポジティブなパワーがみなぎっていました。そういうところがリスナーの皆さんにも伝われば嬉しいです。

Life_artwork ・ジャケットデザインについて教えてください。

ジャケットについては写真でも絵でもタイポグラフィでもかまわないのですが、唯一の判断基準としてこの作品にふさわしいかということ。ありか、なしか?ということだけでした。いろいろな候補の中で芸大の学生が書いてくれた作品がしっくりきたという感じです。作品を手に取った時、ジャケットがアルバムの世界観を最初にリスナーに伝えてくれるものだと思っています。

・どのようなリスナーに聴いてほしいですか?

1枚目のアルバムはHumming Jazzというタイトルでしたが、もちろんJazzではありませんでしたし、今回のアルバムもJazzの要素は入っていますが、Jazzではなく、自分ではPopsに一番近いと思っています。むしろCDになる音楽はすべてPopsになりたいんじゃないかとさえ思います。
音源はひとたびパッケージ化されると、大量生産に向かっていく。音楽ソフトというのはいろいろな人に聴いてもらうことを最初から指向しているものだと思うんです。つまりPopsになるために生まれてきたんだと。
ジャンルに関係なくいろんな人に聴いて欲しいアルバムです。

・今後の予定について教えてください。

3月5日に代官山LOOPでライヴを予定しています。ぜひ皆さんに遊びに来てほしいです。今までほとんどライヴ活動をやっていなかったので、僕自身もとても楽しみです。
できれば、ツアーなどもできればと思っています。

数年前、音楽を作る必然性を感じることができず、無理矢理音楽制作をしていた時期があるんですが、そのようなスランプから脱却できたのは、カバー曲を手がけたことでした。昔の素晴らしい曲を今の時代に蘇らせることで、逆に新しいものを作りたいという欲求がなぜかものすごく出てきました。これからも3作目、4作目と続けてアルバムを制作をして行きたいと思います。
それから、LIFEから6曲入り12inchを発売します。アナログにはCALMさんにリミックスをしていただいたトラックも収録され、とても深い世界観になっています。楽しみにしていただければと思います。

・今の音楽業界は西原さんにとってどのように見えますか?

レコードショップがどんどんなくなっているのがとても寂しいですが、リスナーの音楽の楽しみ方が変わってきたような印象を持っています。楽しみ方が変わっただけで、音楽に対するリスナーの欲求は変わらないと思うので、ライヴや現場でしか見れないものも充実させたいです。

音楽業界は逆に僕たちのようなインディーズはすごいチャンスだと思います。今まで使えなかったようなスタジオを低予算で使用することができたり、製作費に関してもメジャーとほぼ変わらない予算で制作するもことができる。

CDは未完成なメディアだと思うので、デジタルディストリビューションにとって代わられ、近い将来無くなっていくと思います。逆にレコードというメディアはある意味完成されたメディアなので、まだまだ生き続けると思います。取り返しのつかないものだからこそ大切にできると思う。それは例えばレコードは傷ついたら取り返しがつかないということ。人間にとってものを大切に扱うことはリラックスだったり、落ち着く行為なんじゃないかとさえ思うんですよね。

僕はデジタルディストリビューションでもたくさんの曲を買うんですが、愛着をもって音楽に接することができないんですよね。無くなったら、無くなったでいいやという感じなんです。僕はまだデータそのものに愛着を持つということができません。

アルバムからの12inchシングルも2月上旬に発売が決定!ハウスリミックスはcalmが担当!!ヴァイナルファン要チェック! 

Kenichiro Nishiharaからサウンドファインダーの皆様へメッセージ

・リリースパーティ
2010年3月5日(金)@代官山LOOP
"LIFE" RELEASE PARTY supported by waxpoetics japan

open:23:30
Kenichiro Nishihara Live set

・関連リンク
Myspace
Official Blog