2011年3月11日、東日本を襲った未曾有の震災から8か月。サウンドファインダーは、震災発生当初より、被災地への支援を試みてまいりました。3月25日からは、「VANYL SAVES JAPAN」のキャッチのもと、弊社のお客様=音楽ファンの皆様に協力を呼びかけ、売り上げの2%を被災地支援の義援金にあてるキャンペーンを展開いたしました。 去る10月16日、福島空港で「ドラムサークル」を開催、皆様から寄せられたご協力を、届けてまいりました。イベントの内容については、以下に報告いたします。当日、現地で配布し、参加のみなさんにお持ち帰りいただいた「エッグシェイカー」は、この「VINYL SAVES JAPAN」キャンペーン義援金によるものです。 当日は、ドラムサークルファシリテーター協会の全面協力のもと、サウンドファイダー総出で、イベントは、盛況のなか無事に実を結びましたことを、深い感謝とともにご報告します。 ほんとうに、ありがとうございました。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 10月16日。都内からひたすら東北道を北上する。東北道はほとんど復旧しているらしく、どこまで行っても震災の爪痕は感じられない。 ところが、矢吹インターを降りると景色は一変する。福島空港に向かうあぶくま高原道路はところどころにコーンが置かれていて、道路はグニャグニャと波打つようにひん曲がっている。通りの脇に並ぶ家々の屋根瓦は崩壊したままで、あちこちに青いビニールシートがかけられていた。 そんな光景を目の当たりにしたとき、あの東日本大震災の被災地のひとつ、福島にやってきたのだと実感した───。 東京都内からクルマで約3時間半。当日は天気が心配されたものの、なんとか持ち直したらしい。福島空港の空はすがすがしい秋晴れだった。 1_3 今回、参加することになった福島空港の復興イベント「The POWER of ふくしま」は、毎年、ゴールデンウィークに開催されてきた空港祭だ。しかし、震災の影響で今年は中止となったため、復興イベントとして10月15〜16日の2日間、開催されることになったという。 イベントを主催するのは、県や周辺の自治体や商工会議所、空港関連団体などで組織された実行委員会だ。関係者に話を聞くと、「震災以降、線量の高い地域では、安心して外で子どもを遊ばせることもできず、ストレスを抱えている親子も多い。幸いにも空港周辺は線量が低いので、不安を抱えておられる、線量の高い地域に住む親子にも多く来場していただきたいという想いもありました」と言う。 2日間の来場者数は1万人を超えた。大半が周辺住民だったが、話を聞いてみると、郡山市や福島市など、空港周辺よりも線量の高い地域から訪れている親子も多かった。 初日は音楽イベントが中心だったが、2日目は親子で楽しめるイベントがメイン。到着した頃には、すでにウルトラマンショーやマジックショーが始まっていて、子どもたちの大きな歓声が響いていた。 2 今回、全面協力をいただいたドラムサークルファシリテーター協会のみなさんと合流して、ドラムのセッティングを開始。
3_2 サークル状にイスを二重に並べ、用意したエッグシェイカーも置いて、準備完了!
6_2                       リズムに誘われて、あっという間にこの状態に。
7_2 配布したエッグシェイカーもシャカシャカと鳴りだす。
8 人が集まってきたところで、ドラムサークルのガイド役、ファシリテーターの石川さんが登場!ジェスチャーだけで、グルーヴを創り出す!! リズムでコミュニケーションが始まると、グルーヴ感が一体化するドラムサークル。自然とこぼれる子どもたちの笑顔はなんだかとても感動的だった。
10               サークルの脇に置かれた大きなドラムでも、子どもたちがママと一緒にポコポコ叩く。
11 この日のイベントに参加していた地元ジャンベグループ「Nia」のみなさんも、緊急参戦!さらに盛り上げていただきました。
12          ボクもワタシも、パパもママも、おじいちゃんもおばあちゃんも……。大きな音だったり,小さな音だったり……。
13 場の空気を読んで一体感を創り出す、ファシリテーターの石川さん。
13_2 地元の人気者!?ネコのとめちゃんも乱入!
14 ママはトントン!ワタシはシャカシャカ!!
15 40分近いイベントも最高潮に!用意した200セットのエッグシィカーも全て配布終了!入れ替わり立ち替わり、多くの方に参加いただきました!! 参加者の拍手に送られて戻ってきた石川さんは、言った。 「ドラムサークルは、なるべく言葉を使わないで、その場の空気を読みながら参加している人たちのリズムを引きだしていく。最初が難しいんですけど、みんながいい感じで一緒になろうという雰囲気だったので、うまく入っていけましたね。 福島の人はちょっとシャイな感じだったけど、素晴らしい一体感が感じられて、非常に良かったですよ!」 イベントが終了すると、2人の子どもを連れたお母さんが駆け寄ってきて、満面の笑みでわざわざお礼をしにきてくれた。 「子どもがこんなに楽しそうにしている姿を見たのは、震災以降、初めてのことだったかもしれません。 ありがとうございました!」 郡山から2人の子どもを連れてやってきたというパパは、「郡山は空間線量がけっこう高いので、子どもの心配が尽きない。 精神的にも毎日、厳しい状態が続いているけど、今日はいい息抜きになりました」と笑った。来年は娘が幼稚園に入園するそうだ。これを機に、自主避難ということで福島を離れるべきかどうか、今も悩んでいるという。 サークルの外にちょこんと座り、孫と一緒にシェーカーを振り続けていた80歳を超えているだろうおじいちゃんは、嬉しそう。 「毎年、空港祭には来てるんだ。いやあ、俺はこういうのは初めてやったけんども、楽しかったねぇ〜。ドラムサークルだっけ? いろいろ大変だけど、ストレス発散になったな!」 16_large_2 震災以降、自分たちが暮らしてきた福島への想いは、それぞれに複雑なものがあるに違いない。 そんな福島の人々の想いがドラムサークルでひとつになり、少しでも復興へ向かおうと、福島空港の秋空に大きなうねりとなって響き渡っているように感じられた。



<音楽を愛するみなさまへ> 「このドラムサークルがあるから、今日ここに来ました!」 そう言って、わざわざ声をかけてくださる親子がいらっしゃったのが、言葉にできないくらい、本当にうれしかった。 音楽は人を笑顔にし、そして力を与えるものだと信じています。そう、僕たちにできることはまだまだあるはずです。 福島の子どもたちがこの経験を通じて、音楽に触発され、より〝大きな力〟となって、日本中、世界中を包み込む 存在になってくれることを切に願っています。 この機会をくださった実行委員会のスタッフのみなさま、そして、私たちの依頼を快く引き受けてくださったドラムサークルファシリテーター協会のみなさま、本当にありがとうございました。 今回、福島をはじめ、いくつかの被災地を巡りました。そこで感じたことは、目をそむけたくなるような出来事を無理やり納得せざるを得ない状況の中で、被災地のみなさんは想像以上にたくましく、力強く、立ち上がろうとしている、ということでした。これからも私たちは一丸となって進んで行かなくてはなりません。 最後に、このような形で被災地の方々の力に少しでも貢献できたのであれば、それは、サウンドファインダーに参加いただくショップの皆様、そしてサウンドファインダーをご利用いただくお客様あってのことです。 音楽を愛し、大切に思う皆様の気持ちを形にして、微力ながらも届けることができたましたことを、ここに深く感謝いたします。ありがとうございました。 サウンドファインダー 新川宰久

(撮影・取材・文/國尾一樹)