Manamimorita2smallデビューアルバムをリリースしたばかりの時、池袋のAPPLE JUMPという小さなジャズクラブで彼女の演奏を見たことがあります。まだ若干24歳の若者です。みずみずしい演奏で、勢いで突き進むような演奏は今まで私が聴いて来たジャズとは大きく異なるものでした。 それから3年、さまざまな経験を経てリリースされたニューアルバムは今までの作品とは違い、デビュー当時の雰囲気を残しつつも、新たな一面をのぞかせる作品となっています。中でもミッシェルカミロ的なラテンフレバーと4 HERO的なブレイクビーツを掛け合わせたようなThe peacocksは今までなかったManami Moritaを強く印象づける内容となっています。 アルバムタイトル「When the skies are grey」について わたしにとって大切な存在である友人はたとえ曇りの日でもあたしのことを幸せにしてくれる太陽の光です。今回アルバムに参加してくれたミュージシャンも友人ですし、ジャケットデザインについても今回は自分で描くのではなく、友人にお願いしました。 前2作と比べて何か心境の変化があったのでしょうか? 大震災の当日、早朝に私は東京からNYに戻ったのですが、NYに到着すると、日本で大震災があったことをニュースが伝えていて、テレビから流れてくるニュースに、帰ってきてしまったことにとても後悔しました。もう少し日本にいれば、母のそばにいてあげられたのではないかと思うと、自分はここで何をやっているんだろうと。 自分は今まで自分のキャリアのためにピアノを弾いてきた。少しでもよい環境で演奏ができることばかり考えていたんだなと思ったんです。 でも、あの震災で、自分にとって大切なものは何か?ということを問い詰めた時に、自分にとって大切なものは自分そのもののキャリアではなく、家族や友人とのつながりだとはっきり認識したんです。 今まではお客さんがどういうインプロヴィゼーション(即興演奏)を披露したら、驚いたり、びっくりしたりするか?ということを考えていて、作品全体を考えることができていなかったと思うんです。自分も年齢を重ねたからかもしれないけど、曲に対してのイマジネーションが研ぎ澄まされてきた感じで、インプロよりも楽曲ありきで作品を作ることができたのは大きいと思います。自分としては作曲だけで演奏しなくてもいいと思ってた位ですから(笑) 4曲目のUnpredictedは譜面通りに演奏していて、インプロは一切入ってないし、ビートルズのカバーBlackbirdも引き崩すようなことはせず、あくまでも原曲に忠実に演奏していますね。 ピアニストではなく作曲家として意識が今回のアルバムは強いと思います。 あと、今回は今までのピアノトリオとは違い、ヴァイオリン、サックスをフィーチャーしたり、私もピアノ以外にヴァイブラフォンなども演奏していて作品としても幅が広がった気がします。 次回作はヴォーカリストとのコラボれションを実現したいですね。ヴォーカリストには歌詞を書いてもらって、私は曲を付ける。バンドで演奏したり、ヴォーカルとのデュオだったり、雰囲気に合わせて表現したいと思っています。 活動の場を日本に移すことは考えていないんですか? いつかは日本に戻ってきたいと思うのですが、今のところその気持ちではないですね。 というのも、日本の場合はミュージシャンという職種を認めてくれない感じがします。「ミュージシャンです」と言うと、「他に何か仕事をしているの?」と訊ねられたりすることがあるんだけど、日本ではミュージシャンとして認めてくれるのは有名であることが前提になっていると思いますね。だけど、アメリカでは職種としてミュージシャンというものが認められていると思います。人前で演奏したり、CDをリリースしたりすることもミュージシャンだけど、人に教えたりすることも楽しんでやれる環境があるといいうのはうれしいですね。 ジャズもいろいろなジャズがあって刺激的です。ハードバップをやっている人もいれば、ロバートグラスパーのようなヒップホップアプローチのジャズもあり、雑多感じがいいですね。 ロバートグラスパーのライブ見たことがありますが、ドラムプレイが次世代という感じがしましたね。 ドラムはクリスデイヴィスかな?スネアを二つ並べて、チューニングを変えて演奏するということをやってますよね。最近はそういうプレイをする人が増えてきたように思います。私のバンドのThomasもそういうスタイルで演奏していますよ。 アルバムリリース後のツアーについて 日本では1月から全国を回ります。全国いろいろなところで演奏するので、CDを気にいってくれたお客さんや、まだ聴いたことがない方もライブを見に来てほしいですね。日本での最終日はサウンドファインダーさんのイベントですね。 2月2日霞町音楽会、よろしくお願いします。 全国ツアーは5人編成のバンドで行いますが、そのツアーは2月1日で終了し、霞町音楽会はソロピアノで演奏します。他の出演者の方の音楽も楽しみですね。最後のアンコールセッションもワクワクしますね。今までの動画を拝見したんですが、素晴らしい演奏ですね。 楽しみにしています! Manami Moritaというと、誰もが知っているであろう曲は報道ステーションのオープニングテーマのI am。霞町音楽会ではソロピアノを披露していただきますが、年齢を重ね、曲に対してのイマジネーションが高まったという彼女のソロピアノの美しさはデビュー当時間もないこちらの動画でも十分に伝わります。この曲はComing homeという曲で、親元を離れて暮らすすべての人に聴いてもらいたい曲です。