趣味嗜好の異なる二人がジャズというフィルターを通して表現したCOSMIC TEMPLEはジャンルレスな90年代の空気を纏う



インタビューアー 印南敦史

日本のクラブ・ジャズ・シーンに衝撃を与えたクオシモードの活動停止から、早くも3年が経過した。現在、4人のメンバーはそれぞれの道を歩んでいるが、そんななか、リズム・セクションを担っていたドラムスの今泉総之輔とベースの須長和広がコズミック・テンプル名義で活動を開始。7月4日にファースト・アルバム『TEMPLE and TREE means like a COSMIC』をリリースする。

クオシモード時代に確立した「踊れるジャズ」としてのベースを活かしつつ、プラスアルファのエッセンスを加えた独自のスタイルからは、ヒップホップからポスト・ロックまでを含む1990年代の音楽からの影響を感じ取ることができる。
果たして彼らが目指しているものとは? リリースに先駆け、渋谷のカフェの一角で話を聞いた。

-まず気になるのは、気持ちの変化だ。クオシモードからコズミック・テンプルへと変わり、いまどんなことを感じているのだろう?
須長「クオシモードって、曲調だとかにフォーマットのようなものがあったと思うんですよね。パーカッション、ドラム、ベース、ピアノというメンバー構成的にも、できることが限られていましたし。でも、コズミック・テンプルではそういうのを一切意識しなくていいので、開放感のようなものがありました。いろいろなことを考えなくても、いろんなアプローチができるっていう」
今泉「ずっとやりたかったことをやるときなんだなっていう、ちょうどいいタイミングなんだと思います」

-でもコズミック・テンプルは突然変異的に生まれたわけではなく、過去10年以上の交流のなかから自然にできあがっていってものだという。
須長「ソウちゃん(今泉)とはクオシモード時代から、クオシモード以外でもライヴを一緒にやってたんです。俺はもともとそこまでジャズに詳しかったわけではないので、鍛えてもらうという意味でも、毎月一緒にやることには意味がありました。で、いろんな情報を共有して続けてきた結果、それがここにつながったという感じです」
今泉「自然に、普通のジャズだけでは伝えることができないっていう感覚が大きくなっていったんです。普通のフォーマットのジャズだと、ちょっと弱いなあって」

-ところで先にも触れたとおり、コズミック・テンプルのサウンドは1990年代の空気感を意識させる。それはなぜなのだろうか? そして、意図的なものだったのだろうか?
今泉「90年代的なものを作ろうとは意識しなかったですし、狙ってもいないです。ただ、90年代のヒップホップを聴いて育ったんで、自然にそうなったっていうか。僕は、ナズの『イルマティック』がリリースされた1994年が高1か高2だったので、超リアルタイムなんです」
須長「僕は94年は中学生。13歳ぐらいで、バンドを始めたころです。でも、そこまでヒップホップは聴いてなかったですね」
今泉「たぶん僕はブラック寄りなんですけど、カズ(須長)はどっちかっていうとポスト・ロックとか白人もののほうが詳しいと思うんですよ。そんな両者の持ち味がうまく混ざって、カヴァーし合う感じが落としどころじゃないかなと思いますね」
今泉「でもヒップホップ的な側面は、今後もっと出して行きますよ、マジで。いまも初期衝動しか追い求めてないですもん。たとえば、マッドリブを初めて聴いたときの衝撃とか。説明みたいな音楽じゃなくて、“現象”っぽいところまで追い込みたいんですよね。『それを俺がやんなきゃいけないなあ』っていう思いが強くて。

-そんなコズミック・テンプルでは、今泉がドラムを叩きながらラップし、須長はベースを弾きながら歌う。ありそうでなかなかない、個性的なスタイルだ。しかも両者ともスキルは抜群で、その完成度の高さに驚かされる。
今泉「僕はもともとラップしてましたし、ずっと研究もしていたので。音楽的に、ラップからの影響がいちばん大きいんです。僕の出身の青森って、ヒップホップが盛んだったんですよ」
須長「俺もちょっと声も出したかったんで、すごくよかったですね、今回のアルバムは」

-だからこそ必然的に、『TEMPLE and TREE means like a COSMIC』にはごった煮的な楽しさが表現されている。「重要なのはジャンルではなく、結果的に生まれた音楽そのものである」ということを実感させてくれるのだ。また、パトリシア・マルクス、
ダブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)、福井アミ、ウィリアム浩子と多彩なゲストが参加していることも注目に値する。
今泉「みんな近しい、信頼の置ける人たちです。仲がいい人たちばかりですね」

-そんななか、特に衝撃的なのは「SLIDE SHOW feat.ウィリアム浩子」だ。クラブ・ジャズ、ヒップホップ、ロックなどさまざまなエッセンスを凝縮した楽曲が並ぶなかで唯一の、
J-POP的な楽曲なのだ。
今泉「あれはめっちゃ変化球ですよ」
須長「リスクは大きいけど、あえて突っ込むっていう(笑)」
今泉「ひとりでも多くの人に届いてもらえればっていう気持ちもありますし」
須長「こういうアルバムの流れでこの曲が出てきたら、『えっ?』ってなりますよね」
今泉「入れるべきかどうか、けっこう審議したんですよ。ただ、曲がいいから」
須長「それをきっかけに、他の曲も気に入ってもらえたらいいなと」
今泉「そんなにカッコつけるだけの集団じゃないっていう意味合いも込めて、こういうこともできるんだよっていう。それにやっぱり、スロー8ビートって素敵ですし」

-『TEMPLE and TREE means like a COSMIC』を聴いていると、必然的にライヴへの興味がわいてくる。ライヴでの再現性を念頭に置いているであろうことは明らかなので、「生で聴いてみたい」と思わせるのだ。
今泉「おっしゃるとおりで、ライヴは活動の半分を占める重要な部分ですね。いまの時代、どの現場も音楽をひとりのオタクが作ってるんですよ。そのほうが制作費もかからないし早いし、それをライヴでもMacで同期させるんですよね。で、それに合わせてみんなが演奏するっていう。でも、そういうのは大嫌いで、ライヴでもなんでもない。だから、僕らはそこはかなりこだわっています。最初からライヴを想定内で作ってるんです」


-このアルバムは、2人にとっての新たなスタートラインだ。今後の活動については、どう考えているのか?
今泉「基本的にカズがサビを歌って、ぼくがラップをするっていう方向はもうちょっと詰めたいっていうか。もう次作を作ってるんですけど、ライヴでできる曲も増やしたいし、もうちょっと四つ打ち系もやりたいし」

-視線がヒップホップに向いている今泉、異なる角度から現状を見る須長。両者の絶妙なバランスこそがコズミック・テンプルの持ち味なのだろう。
今泉「そういうところはちょっとあると思いますね。俺はけっこう振り切れてるんですけど、カズはaikoさんのバックとかもやってるしポピュラリティがあるんで。でも、違うからこそ組む意味がある。お互いを引き立て合ってるんです」

-だからこの形態で、今後もいいものを作りたいと今泉は語る。そして、もちろんライヴも。
今泉「いまの時代、情報に流されにくい人が増えてると思うし、それを信じたいんですよ。みんな耳が肥えてるはずなんで、媚びずに、二、三歩先を行ってリスナーを試したい。それぐらいの気持ちで作り続けたいですね。

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7月4日ファーストアルバム発売記念配信ライブ決定!
7月4日 19:30よりSTEPPIN' OUT! YouTubeオフィシャルチャネルにて配信
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