北欧のデオダート”こと、ロマン・アンドレンを知ったのは、『フアニータ・アンド・ビヨンド:ライヴ・スタジオ・セッションズ』だった。際立つメロディとジャズファンクが織りなすカラフルな楽曲は北欧ブラジリアンフュージョンの存在を世界に知らしめる名盤中の名盤と言って良い。
毎年コンスタントに作品を発表し続ける彼は『カラー・グリーン』以降、自らのルーツサウンドであるブラジリアンフュージョンに、新たにアフロテイストを取り入れ、2013年の『ジ・オイスター・オブ・バサタン』からアフロバンドカカラカを起用するようになる。
勢いそのままに、当初は2014年にリリース予定だった『レイン・キング』。2年前にはすでにアートワークはアップしており、残るは音源のみという状況のまま時間だけが流れ、ファンの多くが本当にリリースされるのか?となかばあきらめかけた矢先、ここにきて、ようやく日の目をみることとなった。
カカラカとのコラボレーションもネクストレベルに達し、より成熟した演奏、楽曲アレンジを聴かせる素晴らしい内容となっている。



現在のスウェーデンの音楽シーンについて教えていただけますか?
スウェーデンの音楽シーン、特にジャズについてはいい状況だと思う。
ボサノヴァを演奏するようなバンドもいくつかあるけど、僕がやっているようなファンク、ラテン、アフロビートをブレンドしたようなバンドは少なくて・・・。まぁ、でも、誰かがやっているような音楽を同じようにやってもしょうがないから、自分が作りたいと思う音楽をやってるよ。
ビートファンクション(Beatfunktion)はファンクとジャズとアフロをミックスした音楽をやっている唯一のバンドじゃないかな?個人的にも彼らのことをよく知っているし、とってもいいバンドで、いつか一緒に何か作りたいなと思ってる。


今回のアルバムのテーマについて教えていただけませんでしょうか?
このアルバムは今まで作ってアルバムの中でも、もっとも個人的なアルバムだと思ってる。恋愛で生じるいろいろな感情のしがらみをシンプルな物語として表現してるんだけど、作業を続けるうちに、曲というのは自分にとっての何かお告げのようなものと感じるようになったんだ。幸せな恋愛の曲は良いメロディが必要だし、そういう曲を書くときは、自然とそういうメロディが浮かぶ。

芸術は人生をうつす鏡のような側面だけでなく、人生そのものを創造することもあって、人はそういうことを意識することなく、いろんな場面で、そういう経験や気づきをしていると強く信じるようになったね。



Rain king、You said you’re sorry、The Wind brows、Brand new startは収録楽曲の中でも、あなたらしいジャズファンク、メロウグルーヴな作品だと感じました。
僕はもっとアフロミュージックやアフロビートを知りたいと思ってるし、と同時にアフリカの神話についても学んだりしている。前のアルバムの『ジ・オイスター・オブ・バサタン』もアフロに強く影響されていて、今回『レイン・キング』と合わせて、3部作のうちの2つの作品だと思ってる。
Rain kingは個人的な苦悩や愛情などを表現しているんだけど、日々の生活では新しいことが生み出されることで、今までのやり方を変えたりしなければならないことがあって、それがもとで、僕たちの世界は壊れてしまうことがある。こういう時の、何とも言えない、抗しがたい感情をRain kingは表現している。
You said you're sorryは許すことの大切さを表現している。許すというのは与えることと受容することの両面だ。犯してしまった罪を許してもらえなかったら、自分たち自身も許すことが難しい。許すことは怖いことではなく、多くの勇気を得たり、無駄なプライドを捨て去ることなんだ。
The Wind blowsは別れについて書いていいて、事態がよくなるように願っている曲。
風が吹くように物事は人々の間で常に変化する。変化は誰かに促されるものではなく、自分自身で変わるものだから、ある人が最初のころと違うと感じても受け入れる柔軟性が必要だと思うんだけど、その時に大切なことはその人に対して誠実であることだと思うんだ。誠実な応対こそが本当の意味での相互理解を生むと思うので、人間関係や環境の変化にも対応できると思う。まずプライドは捨てて、誠実に会話をすることが大切だよ。

Brand new startをアルバムに収録できたことはうれしいことだよ。この曲は作っては、修正してという作業を繰り返してやった曲でもあるからね。この曲は15歳の時に書き始めていて、今回収録したんだけど、新しい発見や長い間あたためてきたアイデアを見直す、いいきっかけにもなった。僕はアイデアを書き留めておくのが好きで、いうなればアイデアのコレクターだね。ジャンルも内容も関係なく、思いついたことを書き留めている。本にしたらおそらく10冊くらいのホラーやフィクション、ミステリー、アルバムにしたら20作分くらいの分量になるんじゃないかな。時々ぞっとするようなことを思いつくんだけど、そういうは忘れてしまう。連想することは世の中で一番楽しいことだよ。


You said you're sorryは古き良き時代のブラジリアンフュージョンを感じます。
僕はジョアンドナートとデオダートのアルバムを思い出しました。
どうもありがとう!
僕はデオダートの音楽で育ったからね。ありがたいことにこれまでに何度か彼と連絡取り合っていて、そのこと自体がとても幸せだ。そんな人の作品と並べてもらえるなんて、とっても恐縮しちゃうけど。


このアルバムリリース後にライブの予定などはあるのでしょうか?
スウェーデン国内でライブをやる予定だよ。あと日本にも行きたいね。前回が2009年だったから、随分と時間が経ってしまった。地球の裏側の日本で、いるいろんな人に会って、たくさんのファンと交流して、あの時は人生の転機だった。
あとうまくいけば、ナイジェリアのアフロビートフェスティヴァルに出演するかもしれない。


今回のCDリリースは日本だけで、他の国では配信やダウンロード販売と聞いていますが
そうなんだよね。フィジカルのリリースは日本のみなんだ。日本はフィジカルリリースする数少ない国なんだよね。フィジカルのアルバムがリリースできることはホントにうれしいこと。この点について、多くの人にこの何とも言えない、素晴らしい気持ちを分かってもらいたいね。それはそうと、レコードは復活の兆しが見えてる。これには期待してるんだ。


日本に来る予定はあるんですか?
恐らく来年になると思うけど。行く予定だよ。


そえいば、9月に1stアルバムが日本で初めてリリースされるようですが?
そうなんだ!今まで日本では発売していなかったので、楽しみだ。リリースは2004年だったから、もうかれこれ12年経ってる。それまで沢山のアルバムや楽曲を制作してきたけど、このアルバムをリリースすることはあきらめてなかったんだ。音楽が作りたくて仕方なかった時に作ったアルバムだから、自分の中では特別なものだったんだ。


これで日本ではすべてのアルバムがリリースされることになりますが。
いやー、素晴らしいね。僕が音楽を作りづけることができるモチベーションになるよ。
日本のみんなにはホントに感謝している。これからも音楽を作りづけるよ!




ロマン・アンドレン/レイン・キング
jacket
1. The Child That I Am (Omo Kekere Ti Moje)
2. It's A Beautiful Day
3. My Heart Belongs To You (Tie Nin Se)
4. And You Never Said Goodbye
5. Rain King (Oba Ojo)
6. Where You Go, I Go (Osope Kin Duro Moduro)
7. You Said You're Sorry
8. Morning Dew
9. Say It, Then I Listen (So Kingbo)
10. Joy, Look For Me (Idu Nu Wa Mi Wa)
11. And The Wind Blows (Feat. Gee Bello)
12. A Brand New Start
13. The Child That I Was (Outro)

CDのご購入はこちらから